論文紹介

第14回論文紹介(2009.10更新)

グループ名
生体応答論講座
著者
Katherine R. Schouest, Yasuhiro Kurasawa, Tokiko Furuta, Naoki Hisamoto, Kunihiro Matsumoto, Jill M. Schumacher
タイトル(英)
The Germinal Center Kinase GCK-1 is a negative regulator of MAP kinase activation and apoptosis in the C. elegans germline.
タイトル(日)
胚中心キナーゼGCK-1は線虫の生殖巣におけるMAPキナーゼの活性化とアポトーシスの負の制御因子である
発表された専門誌
PLoS One, in press (2009)

胚中心キナーゼ(GCK)は種を越えて保存されたキナーゼファミリーである。これまでの研究から、一般的にGCKはERK, JNKおよびp38 MAPキナーゼカスケードを活性化するとされており、細胞の成長や増殖、極性、細胞移動およびストレス応答への関与が示唆されているが、実際の生体における機能については不明の部分が多い。今回、われわれは線虫のGCKのひとつであるGCK-1について、その個体レベルでの機能を解析した。GCK-1を欠損した線虫を作成したところ、その線虫は不稔になり、正常な卵が形成されなくなった。その生殖巣を詳細に調べたところ、パキテン中期に起きるERK型MAPキナーゼMPK-1aの活性化が顕著に亢進した結果、卵前駆細胞が異常な発生過程へと進行していることが判明した。また卵前駆細胞のアポトーシスも顕著に亢進していた。これらの結果から、GCK-1は一般的なGCKとは異なり、線虫の生殖巣においてMAPキナーゼの活性化を抑制しており、また同時にアポトーシスも抑制するように働いていると考えられる。

図1:

野生型(A)およびgck-1変異体(B)におけるMPK-1の活性化
単離した生殖巣の染色像。緑色は活性化型MPK-1、青色は核を示している。gck-1変異体では、パキテン期(点線)におけるMPK-1の活性化が顕著に亢進している。また発生異常を起こした卵細胞でも散発的な活性化が認められる(矢頭)。なお矢印はディアキネシス期の卵細胞を示す。

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