第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 構造生物学研究センター
- 著者
- Reckel S, Gottstein D, Stehle J, Löhr F, Verhoefen MK, Takeda M, Silvers R, Kainosho M, Glaubitz C, Wachtveitl J, Bernhard F, Schwalbe H, Güntert P, Dötsch V.
- タイトル(英)
- Solution NMR structure of proteorhodopsin.
- タイトル(日)
- プロテオロドプシンの溶液NMR構造
- 発表された専門誌
- Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (2011) 50. 11942-6
膜タンパク質は、基礎的な生命現象の作動原理の理解に加えて、創薬の観点からも重要視されており、その膜中に埋もれた状態での構造情報の取得は大変重要な意義を持つ。しかし、このような膜タンパク質の立体構造解析は、結晶化や可溶化が難しく困難なため、X線結晶構造解析やNMR解析にとって現在に至るも挑戦的な課題である。
本論文は、大腸菌無細胞タンパク質発現系を用いて調製したpH 依存性プロトンチャネル、プロテオロドプシンのNMR立体構造決定に関して報告したものである。プロテオロドプシンは、7回膜貫通型のトポロジー構造を有しており、膜中におけるヘリックスの相対配置の決定が重要な構造情報となる。本研究においては、界面活性剤を用いて活性機能を保ちつつ可溶化したプロテオロドプシンの高分解能NMR測定に成功した。立体構造決定においては、異なる膜貫通ヘリックス側鎖間のNOE取得が一つの重要なポイントであったが、立体整列同位体標識(SAIL)法によるロイシンメチル基のヘリックス間NOEの立体選択的帰属やスピンラベルによる緩和促進効果(PRE)等を利用し、プロテオロドプシンの高度立体構造決定を実現した。本論文はAngew. Chemie において VIP(Very Important Paper)との評価を受けている。なを、本研究はフランクフルト大学 Volker Dötsch 教授らのグループと共同で実施したものである。
図1:
NMR法により決定されたプロテオロドプシンのミセル溶液中の立体構造

今後の予定