論文紹介

第19回論文紹介(2012.6更新)

グループ名
超分子機能学講座 超分子構造学
著者
平野 秀美、松浦 能行
タイトル(英)
Sensing actin dynamics: Structural basis for G-actin-sensitive nuclear import of MAL
タイトル(日)
細胞骨格関連遺伝子群転写調節因子MALがアクチン動態変化に応答して核移行する機構の構造基盤
発表された専門誌
Biochem. Biophys. Res. Commun., 414, 373-378 (2011)

Rho GTPaseは増殖因子など細胞外からのシグナルによって活性化され、アクチン系細胞骨格の再編成をひきおこす。このとき、細胞質におけるアクチン動態の変化(アクチン重合の促進)の情報は核に伝えられ、細胞骨格・細胞接着関連遺伝子群の転写が調節され、細胞外からのシグナルに応答した細胞の形態変化や細胞の運動性・接着性の変化が効果的におこる(図1)。この「Rho→アクチン動態→転写制御」というシグナル伝達は、多細胞生物の発生・分化や神経回路網構築などにおいて重要な役割を果たし、癌の転移などとも関連が深い。Rhoシグナリングによるアクチン動態変化と転写制御の橋渡しの役割をするのは、転写因子SRFのcoactivatorとしてはたらくタンパク質MALである。私たちはMALの核移行受容体を同定し、核移行受容体とMALの複合体の結晶構造(図2a)を解き、MALの核移行シグナルを同定した。さらにMALとGアクチンの複合体の結晶構造(図2b)を解き、MALが最大5分子のGアクチンと結合すること、FアクチンではなくGアクチンでなければMALに結合できないこと、Gアクチンの協同的結合によりMALの核移行シグナルが複数個のアクチンに取り囲まれ、MALが核移行受容体に結合できない構造に変化し、MALの核移行が阻害されることを明らかにした。こうして、MALのGアクチン濃度変化感知と核移行のしくみを明らかにした。

図1:

Rhoシグナリングによる転写制御

図2:

(a)MALと核移行受容体の複合体の結晶構造。(b)MALと5つのGアクチンの複合体の結晶構造。

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