第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 海洋発生生化学グループ
- 著者
- 齋藤 貴子、柴 小菊、稲葉 一男、山田 力志、澤田 均
- タイトル(英)
- Self-incompatibility response induced by calcium increase in sperm of the ascidian Ciona intestinalis.
- タイトル(日)
- カタユウレイボヤ精子の細胞内カルシウム上昇によって誘導される自家不和合性応答
- 発表された専門誌
- Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 109 (11), 4158-62.
脊索動物尾索類であるカタユウレイボヤは雌雄同体で、精子と卵をほぼ同時に放出しますが、精子が卵保護層(卵黄膜)に結合する段階で自己と非自己の認識(アロ認識)が行われ、自家受精は回避されています。しかし、自己精子が卵黄膜に結合後、どのようにして自家受精を回避しているかは不明でした。
本研究では、精子は自己非自己に関係なく卵黄膜に結合すること、また自己の卵黄膜に結合した精子の一部は卵黄膜から離脱すること、さらに、自己の卵黄膜に結合し続けた精子に関しても鞭毛の波形の変化を引き起こし、最終的に運動性を失うことを明らかにしました。
精子鞭毛の波形や運動性は細胞内カルシウム濃度によって制御されていることや、精子側の自家不和合性候補分子s-Themis-Bはカチオンチャネルドメインを有しており、精子細胞内へのカルシウム流入を調節している可能性が考えられます。そこで、自己と非自己の卵黄膜に結合した精子の細胞内カルシウム濃度を比較しました。その結果、自己の卵黄膜に結合した精子が細胞内の急激なカルシウム濃度の上昇(流入)を引き起こすことを明らかにしました。このように、カタユウレイボヤの自家不和合性はカルシウムによって制御されており、精子細胞内カルシウム濃度の上昇による自家不和合性反応によって、精子鞭毛運動が変化し、受精能が喪失することで自家受精を回避していることが明らかとなりました(図1)。
図1:

今後の予定