論文紹介

第19回論文紹介(2012.6更新)

グループ名
遺伝子解析学
著者
杉田 千恵子、加藤 大和、吉岡 泰、鶴見 尚子、飯田 由佳里、町田 泰則、杉田 護
タイトル(英)
CRUMPLED LEAF (CRL) homologs of Physcomitrella patens are involved in the complete separation of dividing plastids.
タイトル(日)
葉緑体分裂を完了するのに働く植物特有の制御タンパク質
発表された専門誌
Plant and Cell Physiology 53 (6) 1124-1133 (2012).

葉緑体の分裂は数多くの核遺伝子の働きによってコントロールされています。シロイヌナズナのCRUMPLED LEAF (CRL)遺伝子も葉緑体分裂に関与する遺伝子のひとつで、この遺伝子が変異すると植物体が矮小になり、葉緑体が巨大化することが知られていました。興味深いことに、CRL遺伝子は植物に広く存在しますが、藻類には見つかりません。しかし、植物におけるCRLの分子機能については未だ不明です。

私たちは、葉緑体分裂におけるCRLの役割を調べるためヒメツリガネゴケというモデル植物を使って研究を行いました。ヒメツリガネゴケは2コピーのCRL遺伝子をもち、2個ともノックアウトした変異株を作製しその表現型を観察しました。変異株では通常50個くらいある葉緑体が10個程度に減り、細胞の中は大きな葉緑体でしめられていました(図1)。遺伝子破壊株の原糸体細胞を時間を追って詳細に観察したところ、分裂中のダンベル型になった葉緑体のくびれが途中段階で停止し、くびれが緩んで大きな葉緑体になるのが観察されました(図2)。このように、CRLタンパク質がないと葉緑体分裂の最後の仕上げがうまくいかないことがわかりました。CRLタンパク質は葉緑体分裂装置の働きを最終段階でコントロールする調節因子として働いていると考えられます。

なお、本論文は掲載号の表紙を飾り、Editor-in-Chief's choiceとして紹介されました。

図1:

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