論文紹介

第19回論文紹介(2012.6更新)

グループ名
生体調節論講座 生体応答論
著者
Emily Omori, Maiko Inagaki, Yuji Mishina, Kunihiro Matsumoto, and Jun Ninomiya-Tsuji
タイトル(英)
Epithelial TAK1 kinase is activated through two independent mechanisms and regulates reactive oxygen species
タイトル(日)
上皮組織においけるTAK1キナーゼは異なる2つの機構で活性化され、活性酸素種を制御する
発表された専門誌
Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 109, 3365-3370 (2012)

皮膚や腸管上皮などの上皮組織は、外界からの細菌や紫外線などのストレスに常時さらされている。これらの組織では、ストレスによって細胞内で産生される活性酸素種を除去することが、組織の維持に必要である。これまでに、TAK1キナーゼが、上皮組織における活性酸素種除去に必須の役割を果たしていることが明らかになっていた。しかし、その活性が、どのように維持されているかは不明であった。TAK1キナーゼにはTAB1とTAB2と呼ばれる2つの主要な結合因子がある。培養細胞を使った研究から、これらは全く別の機構でTAK1を活性化することが明らかになっていた。本研究では、TAB1とTAB2のどちらかが、上皮組織におけるTAK1活性化に重要であるという仮説を立て、上皮組織特異的TAB1あるいはTAB2欠損マウスを作製し検討した。その結果、予想に反して,TAB1あるいはTAB2単独の欠損マウスは、TAK1欠損マウスと異なり、完全に正常であることがわかった。そこでさらに、TAB1とTAB2の上皮組織特異的2重変異マウスを作製し解析した。その結果、この2重変異マウスは、TAK1欠損マウスと全く同じ表現型を示すことを見いだした(図参照)。これらの結果から、上皮組織におけるTAK1キナーゼは、TAB1とTAB2の2つの異なる活性化因子によって重複して活性化されていることが明らかになった。TAK1の活性を異なる2つの機構によって保つことで、上皮組織維持の安全性が高められていると考えられる。

図1:

図:(A) 生後5日目の皮膚特異的TAK1, TAB1, TAB2欠損マウス。 左2つのパネルは、コントロールマウスと皮膚特異的TAK1欠損マウス。右側3つのパネルは、皮膚特異的TAB1とTAB2欠損マウス。TAK1欠損とTAB1/TAB22重欠損では、皮膚の炎症によるかさぶたが観察される。
(B)生後1日目の腸管上皮特異的TAK1, TAB1, TAB2欠損マウスの腸。 TAB1単独欠損、TAB2単独欠損、およびTAB1/TAB22重欠損のマウスの腸を示している。TAB1/TAB22重欠損のみで、腸管上皮の炎症による出血と、腸組織が破壊されたことによる腸の短縮が観察される。

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