第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 生体調節論講座 生体応答論
- 著者
- Kouki Ishikawa, Atsuki Nara, Kunihiro Matsumoto, and Hiroshi Hanafusa
- タイトル(英)
- EGFR-dependent phosphorylation of leucine-rich repeat kinase LRRK1 is important for proper endosomal trafficking of EGFR
- タイトル(日)
- EGFR依存的なロイシンリッチリピートキナーゼLRRK1のリン酸化は適切なEGFRの細胞内トラフィックに重要である
- 発表された専門誌
- Molecular Biology of the Cell, 23, 1294-1306, 2012
上皮増殖因子受容体(EGFR)の活性化は、MAPキナーゼ経路など多数のシグナル伝達経路を活性化する。過剰なEGFRの活性化は細胞の癌化を引き起こすことが知られている。これを防ぐため、活性化したEGFRはエンドサイトーシスにより細胞膜から取り込まれ、早期エンドソーム、後期エンドソームを経てリソソームで分解される。我々はロイシンリッチリピートキナーゼLRRK1が、EGFRの早期エンドソームから後期エンドソームへの移行をキナーゼ活性依存的に制御していることを明らかにしていた。本研究では、EGFRがLRRK1のTyr-944をリン酸化し、そのキナーゼ活性を抑制していることを明らかにした。EGFRによる抑制を受けないLRRK1変異体(LRRK1 Y944F変異体)は、恒常的にキナーゼ活性を持ち、これを細胞に発現させるとEGFRの輸送が過剰に促進されることがわかった。またEGFRを含む早期エンドソームは、その輸送と協調して後期エンドソームへと成熟し、最終的にリソソームと融合することが知られている。LRRK1 Y944Fを発現させた細胞では、EGFRを含む早期エンドソームの成熟が異常になり、核付近に未成熟で早期エンドソームと後期エンドソームの性格を併せ持つ”ミックス”されたエンドソームを形成することが明らかとなった。このようなエンドソームはリソソームと融合できず、EGFRを蓄積した肥大化したエンドソーム画分を形成していた。今回の研究から、EGFRによるLRRK1キナーゼ活性の制御は、EGFRを含むエンドソームの適切な輸送と成熟に重要であることが明らかとなった。
図1:

今後の予定