論文紹介

第19回論文紹介(2012.6更新)

グループ名
生体調節論講座 生体応答論
著者
李 春, 久本 直毅, Paola Nix, 金尾 朱夏, 水野 智亮, Michael Bastiani, 松本 邦弘
タイトル(英)
The growth factor SVH-1 regulates axon regeneration in C. elegans via the JNK MAPK cascade.
タイトル(日)
増殖因子SVH-1はJNK MAPKカスケードを介してC.エレガンスの神経再生を制御する
発表された専門誌
Nature Neuroscience 15, 551-557 (2012).

神経軸索再生を誘導するメカニズムは線虫から哺乳動物まで種を越えて保存されているが、その詳細については不明の点が多い。我々は、線虫を用いた網羅的なRNAiスクリーニングにより、軸索再生を制御する新規遺伝子としてsvh-1およびsvh-2を同定した。svh-1は分泌型の増殖因子様蛋白質を、svh-2は受容体型チロシンキナーゼをコードしていた。svh-1は頭部感覚神経であるADLで特異的に発現しており、細胞非自律的に神経軸索再生を誘導した。それに対し、svh-2は神経細胞で通常は発現していないが、軸索を切断すると切断された神経細胞特異的に発現が誘導された。また遺伝学的な解析から、SVH-1はSVH-2の上流で機能することも明らかになった。これらのことから、頭部感覚神経から分泌されたSVH-1は、軸索切断により発現が誘導されたSVH-2を介して、下流にシグナルを伝達すると考えられる。さらなる遺伝学的および生化学的解析から、SVH-2はJNK型MAPKカスケードの構成因子のひとつであるMLK-1と結合してこれをリン酸化することでJNK型MAPKカスケードを活性化し、軸索再生を誘導することも明らかになった。以上の結果から、SVH-1/SVH-2からなる増殖因子—受容体シグナル系は、JNK型MAPKカスケードの活性化を介して軸索再生を誘導することが示唆された。

図1:

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