第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 形態統御学講座 脳機能構築学グループ
- 著者
- 岡崎 史子、須藤 雄気、高木 新
- タイトル(英)
- Optical Silencing of C. elegans Cells with Arch Proton Pump
- タイトル(日)
- 水素イオンポンプArchによる線虫C. elegans細胞の光を用いた鎮静化
- 発表された専門誌
- PLoSONE 7: e35370 (2012)
近年、細菌や原生生物由来の光駆動性のイオンポンプやチャネルを動物の神経や筋肉などの興奮性細胞に発現させることで、標的細胞の活動を光によって制御する技術が急速に進展している。 この方法はoptogenetics-光遺伝学-と呼ばれ、その高い時間分解能、非侵襲性や特異性から、今後の神経科学の発展に大きく寄与すると考えられている。これまで光遺伝学において神経細胞興奮抑制に利用されてきたHalorhodopsin(NpHR)には、短時間照射で不活化してしまう、という問題点があった。我々は、最近哺乳類において強力かつ持続的に神経細胞の興奮を抑制することが報告された高度好塩古細菌由来の光駆動性水素イオンポンプ、Archaerhodopsin-3 (Arch) に着目し、今回、Archの線虫C. elegansへの応用を試みた。その結果、ArchはC. elegansでも神経および体壁筋の活動を長時間にわたって沈静化できることがわかった。さらにArchを用いて運動神経回路内の特定の種類の神経細胞の活動を抑制することで線虫の移動運動パターンを変化させることに成功し、各種の神経細胞の神経細胞の運動制御における役割を確認した。
図1:
光駆動性水素イオンポンプArch
細胞膜上に発現したArchは緑色(550nm)の光によって活性化し、細胞外へと水素イオンを汲み出すことによって、興奮性細胞を沈静化する。
図2:
体壁筋にArch(緑色蛍光タンパクGFPが融合している)を発現させた線虫 (スケールバー:100um)

今後の予定