第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 形態統御学講座 脳機能構築学グループ
- 著者
- 糠塚 明、玉木 修作、松本 邦弘、小田 洋一、藤澤 肇、高木 新
- タイトル(英)
- A shift of the TOR adaptor from Rictor towards Raptor by semaphorin in C. elegans
- タイトル(日)
- C. elegansにおけるセマフォリンによるTORアダプターのRitorからRaptorへのシフト
- 発表された専門誌
- Nature Communications 2:484 doi: 10.1038/ncomms1495 (2011)
形態形成因子セマフォリンは、脊椎動物の脳をはじめとする神経系が形作られる際に神経線維を導くシグナル分子として有名であり、神経線維再生の研究でも注目されている。 一方、TORは細胞の成長や代謝のキーレギュレーターとして知られるリン酸化酵素である。TORは2種のアダプター因子、Raptor・Rictorのいずれかと結合し、TORC1とTORC2という異なる複合体を独立に形成するが、その選択機構は不明であった。われわれは線虫C. elegansにおいてRictor変異がセマフォリンシグナル変異体の表現型を抑圧することを手がかりにして、セマフォリンの作用によりTORアダプター因子がRictorからRaptorへシフトすることを明らかにした。そしてこれに伴いTORC1下流での翻訳開始因子の活性化、TORC2下流でのPKC活性の抑制が起こること、さらに、これら下流因子活性の変化がセマフォリンによって引き起こされる細胞形態変化に重要なことを見出した. これらの知見は、セマフォリンという単一のシグナル分子が、様々な細胞内の現象の調節に関与しているTORと深く関わることで多様な細胞特性に変化を引き起すことを示唆しており、今後のセマフォリンおよびTOR研究に重要な指針を与えるものである。
図1:
セマフォリンがTOR複合体を通じて細胞形態を制御するメカニズム

今後の予定