第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 超分子機能学講座 生体膜機能
- 著者
- 小池 雅文、西岡 典子、小嶋 誠司、本間 道夫
- タイトル(英)
- Characterization of the flagellar motor composed of functional GFP-fusion derivatives of FliG in the Na+-driven polar flagellum of Vibrio alginolyticus
- タイトル(日)
- 海洋性ビブリオ菌のナトリウム駆動べん毛における機能的なGFP融合FliGの機能解析
- 発表された専門誌
- BIOPHYSICS, 7:59-67 (2011)
海洋性ビブリオ菌の極べん毛は、膜タンパク質PomA、PomBからなる固定子を介したナトリウムイオンの流入によって回転する。PomAと、回転子タンパク質FliG間の相互作用がべん毛の回転に必要なトルクを産生すると考えられている。以前の研究において、fliGを欠損したビブリオ菌のべん毛モーター内で蛍光タンパク質GFPを融合したFliGが機能を保つことが報告された。本研究では、fliG欠失ビブリオ菌においてFliGのNまたはC末端にGFPを融合したタンパク質を発現させた。どちらのGFP融合FliGとも、べん毛形成や局在には影響がなく、べん毛の機能は保持された。これらを用いて詳細な運動解析を行ったところ、GFPの融合位置によってべん毛の回転力産生と回転方向転換の頻度に異なる影響を与えることが明らかとなった。べん毛のトルク産生に直接関与していると考えられているFliGのC末端にGFPを融合した場合、ビブリオ菌の遊泳速度は大きく低下し、べん毛の回転方向転換は阻害された。一方で、FliGのN末端にGFPを融合した場合は、遊泳速度は野生型FliGの場合と同程度であったが、回転方向転換頻度は大きくなった。また、GFP融合FliGは回転子と共精製されたが、野生型FliGと比べると不安定で外れやすいことも分かった。本研究から、海洋性ビブリオ菌のべん毛においてFliGのC末端がトルク産生に重要であることが示された。このことはこれまでの研究結果を支持するものであった。また、融合GFPがFliGのドメイン解析に有用であることを示した。
図1:
べん毛モーター内におけるFliGと固定子複合体の配置予想図。固定子複合体とFliGを以前報告されたサルモネラのべん毛モーターの電子顕微鏡像に重ね合わせた。FliGの全長と固定子タンパク質MotBのC末端領域の構造モデルはそれぞれ、PDBデーターの3HJLと2ZVZを用いて MolFeat (FiatLux Co., Tokyo, Japan)によって作成した。

今後の予定