論文紹介

第19回論文紹介(2012.6更新)

グループ名
超分子機能学講座 生体膜機能
著者
田島 寛隆、今田 勝巳、佐久間 麻由子、服部 文幸、奈良 敏文、加茂 直樹、本間 道夫、川岸 郁朗
タイトル(英)
Ligand specificity determined by differentially arranged common ligand-binding residues in bacterial amino acid chemoreceptors Tsr and Tar.
タイトル(日)
大腸菌走化性受容体TsrとTarのリガンド特異性は共通なリガンド結合残基の空間的配置の違いによって決定される
発表された専門誌
Journal of Biological Chemistry, 286, 42200-42210, (2011)

大腸菌は環境からの刺激を感知し,よりよい環境へと移動する走性とよばれる性質をもつ.刺激は内膜に局在する受容体によって感知される.大腸菌に強い誘引応答を引き起こす物質としてセリンとアスパラギン酸がある.この二つは構造のよく似たアミノ酸だが,アスパラギン酸はTar,セリンはTsrという異なる受容体によって認識される.これまでに,Tarのペリプラズムドメインの結晶構造解析によってアスパラギン酸結合残基が決定され,それをもとにTsrのセリン結合残基も推定されていた.TarとTsrのリガンド特異性にはリガンド結合残基の違いが重要であると考えられてきたが,TarやTsrの変異受容体やキメラ受容体を用いた解析により,リガンドと直接結合する残基の立体的配置の違いが重要だと考えられた.そこで,Tsrのペリプラズムドメインの立体構造を決定し,Tarのものと比較した.アスパラギン酸とセリンに共通する,α-アミノ基やα-カルボキシル基に結合する残基の配置はTarとTsrで非常によく似ていた.しかし、アスパラギン酸やセリンの側鎖に結合する残基の配置は大きく異なっており,リガンドの識別に重要であると考えられた.またTsrとTarでは,リガンド結合ポケット周囲のアミノ酸残基の電荷やリガンド結合ポケットのサイズが異なっており,これらの構造上の違いによってリガンドを厳密に識別していると考えられた.

図1:

A: 保存されていないリガンド結合残基をTarとTsrで入れ替えた変異受容体を発現した大腸菌のアミノ酸リガンドに対する誘引応答.
B: TarとTsrのペリプラズムドメインの表面電荷.
C: X線結晶解析から推定されたリガンド結合残基の立体的配置の概略図

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