第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 超分子機能学講座 生体膜機能
- 著者
- 竹川 宜宏、李 娜、小嶋 誠司、本間 道夫
- タイトル(英)
- Characterization of PomA mutants defective in the functional assembly of the Na+-driven flagellar motor in Vibrio alginolyticus.
- タイトル(日)
- 海洋性ビブリオ菌Na+駆動型べん毛モーターの機能的集合を欠損するPomA変異体の特性分類
- 発表された専門誌
- Journal of Bacteriology, 194(8), pp.1934-19399 (2012)
細菌のべん毛モーターは固定子と回転子から構成されており、固定子チャネル内を共役イオンが流れることによって回転子と固定子が相互作用し、回転力が発生する。モーターの回転のためには、固定子が回転子のまわりに正しく集合する必要があり、この集合には固定子の細胞質側領域と回転子との相互作用が重要であると考えられている。本論文では、海洋性ビブリオ菌のNa+駆動型べん毛モーターにおいて運動能を欠損するような固定子タンパク質PomAのいくつかの変異体に着目し、それらの変異体における固定子の集合能を、GFP融合固定子を用いて観察した。すると観察した全ての変異体において固定子の回転子まわりへの集合が著しく低下していることが分かった。さらにこれらの変異体における固定子複合体の形成能、大量発現させたプラグ欠失固定子による菌の生育阻害の抑制能を調べ、変異による固定子集合能の低下の原因を分類した。これらの結果から、固定子の細胞質側領域の変異により固定子が回転子のまわりへと集合できなくなり、その原因は、1) 固定子を介した共役イオンの流入が阻害されるため、あるいは2) 回転子との相互作用が阻害されるため、であると分類できた。変異H136Yによって固定子-回転子間相互作用が阻害されることから、この残基を含む領域が回転子との相互作用界面に存在する可能性が示された。
図1:
(A) 固定子の回転子まわりへの集合のモデル。固定子タンパク質PomAとPomBは細胞膜上でヘテロ6量体構造を形成し、固定子を介したNa+の透過に依存して回転子の周囲に集合する。OM:外膜、PG:ペプチドグリカン層、IM:内膜。
(B) 本研究で部位特異的導入したPomA変異部位。■, PomAの発現を阻害する変異部位; ▲, PomA/PomB複合体の形成を阻害する変異部位; ●, 共役イオンの透過を阻害する変異部位; □, PomA/PomB複合体の形成と共役イオンの透過の両方を維持している変異部位。
(C) PomAに変異をもつGFP融合固定子のモーターへの集合。固定子が極べん毛基部へと集合すると、蛍光ドットが極局在する様子が観察される(野生型、左のパネル)。PomAのD220K変異体では野生型の25%以下まで極ドットの出現が低下しており、固定子の回転子周囲への集合が阻害されていることが分かった(右のパネル)。pHFGABはGFP-PomA/PomBを発現するプラスミド、pHFGBA2はGFP-PomB/PomAを発現するプラスミド、NMB191はpomA, pomB遺伝子を欠失したビブリオ菌。(B)で示した全ての変異部位の変異において、蛍光ドットの出現が著しく阻害されていた。

今後の予定