第19回論文紹介(2012.6更新)
- グループ名
- 特任教授グループ(発生・メカノ・セルバイオロジー:植物)
- 著者
- 石橋 奈々子、金丸 京子、上野 宜久、小島 晶子、小林 哲夫、町田 千代子、町田 泰則
- タイトル(英)
- ASYMMETRIC-LEAVES2 and an ortholog of eukaryotic NudC domain proteins repress expression of AUXIN-RESPONSE-FACTOR and class 1 KNOX homeobox genes for development of flat symmetric leaves in Arabidopsis
- タイトル(日)
- ASYMMETRIC LEAVES2 と真核生物のNudCドメインタンパク質のオルソログタンパク質はシロイヌナズナの扁平で左右相称な葉の発生においてAUXIN-RESPONSE-FACTOR 遺伝子とクラス1 KNOX ホメオボックス遺伝子の発現を抑制している
- 発表された専門誌
- Biology Open 1, 197-207 (2012)
葉が扁平になるには、葉の表側と裏側の確立が重要である。葉の左右相称性に顕著な異常を示すシロイヌナズナの asymmetric leaves2 (as2) や as1 変異体では、葉の表側の性質が弱まることも知られている。今回、as1やas2変異体背景において、裏側化した棒状の葉を形成する新奇変異体、enhancer of asymmetric leaves2 and asymmetric leaves 1 (eal) を単離した(図1)。as2 eal 二重変異体では、葉の裏側分化に関わるオーキシン応答因子ETTIN (ETT) など、複数の遺伝子の転写レベルが上昇していた。この二重変異体に機能欠失型の ett 変異を導入すると、葉の棒状化が抑圧され扁平性が回復した(図1)。以上の結果は、as2 eal 二重変異体の葉の棒状化は、ETT の発現レベルの上昇に起因することを示す。また、eal 変異体では、細胞周期関連遺伝子のmRNAレベルが低下し、細胞増殖能の低下が見られた。さらに、EAL 遺伝子は糸状菌 Aspergillus nidulans の核の移動に関わる Nuclear distribution gene C (NudC) と相同であり、糸状菌の nudC 変異体における細胞増殖や核移動の異常を相補した。以上の結果から、EAL と細胞分裂や核の移動との関連性が考えられる。AS2 (AS1) と EAL は、葉の裏側分化に関与するETTの転写を協同的に抑制し、葉の表側分化を正に制御すると考えられる(図2)。また、EAL は葉の表側分化と同時に細胞分裂を制御することで、扁平で左右相称な葉の形成に機能していると推察された。
図1:
シロイヌナズナの各変異体の地上部。as2 eal二重変異体は棒状の葉を形成し、ett 変異はas2 eal 二重変異体の葉の扁平性を回復させた。左から、野生型、as2-1変異体、eal-1変異体、as2-1 eal-1 二重変異体、as2-1 eal-1 ett-13三重変異体。矢印は棒状の葉を示す。スケールバー: 10 mm
図2:
AS1、AS2とBOB1の作用機構モデル

今後の予定