論文紹介

第22回論文紹介(2014.1更新)

グループ名
植物生理学グループ・WPIトランスフォーマティブ生命分子研究所
著者
Yin Wang、野口航、小野奈津子、井上晋一郎、寺島一郎、木下俊則
タイトル(英)
Overexpression of plasma membrane H+-ATPase in guard cells promotes light-induced stomatal opening and enhances plant growth
タイトル(日)
気孔開口促進による植物の生産量の増加
発表された専門誌
Proc Natl Acad Sci USA, 111(1): 533–538 (2014)

植物の表皮に存在する気孔は、一対の孔辺細胞により構成され、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みなど、植物と大気間のガス交換を調節する。気孔は、植物が光合成を盛んに行う太陽光下、特にシグナルとして作用する青色光に応答して開口する。このとき青色光は、孔辺細胞に発現する青色光受容体フォトトロピンに受容され、細胞膜H+-ATPase(プロトンポンプ)を活性化し、K+取り込みの駆動力を形成する。K+蓄積により、孔辺細胞の浸透圧が上昇し、水が取り込まれ、最終的に孔辺細胞の体積が増加することによって気孔開口が引き起こされる。
 本研究では、これまでに明らかとなっている気孔開口反応に関わる主要因子(青色光受容体フォトトロピン、細胞膜プロトンポンプ、内向き整流性K+チャネル)を孔辺細胞のみで発現量を上昇させた植物体を作出し、表現型の観察を行った。その結果、プロトンポンプ過剰発現株において、光による気孔開口が通常よりも25%大きくなり(図1)、光合成活性が増加し、植物の生産量が1.4~1.6倍増加することが明らかとなった(図2)。一方、プロトンポンプ過剰発現株は、野生株と同様な乾燥応答や乾燥耐性が見られた。以上の結果は、気孔開度が光合成や生産量の制限要因になっていることを初めて実証するものであり、気孔の開口を大きくすることが植物の生産量を増加させることに有用であること示している。

図1:野生株とプロトンポンプ過剰発現株の光照射後の典型的な気孔開度の比較

プロトンポンプ過剰発現株は、光照射後、野生株より常に大きな気孔開度を示す。

図2:シロイヌナズナの野生株とプロトンポンプ過剰発現株の植物体の表現型の比較

細胞膜H+-ATPase過剰発現株は、野生株と比べて、ひと回り大きく育ち(A~C)、播種後25日目において地上部の生重量と乾燥重量が42~63%増加した。播種後45日目においては、花茎が長くなり、多くの花をつけ、種子の収量が増加した(D)。種子や莢を含む花茎の乾燥重量は、野生株と比べて36~41%増加していた。

カレンダー

今後の予定


pagetop