論文紹介

第24回論文紹介(2014.10更新)

グループ名
生殖分子情報学グループ
著者

浜村有希、西巻萌、武内秀憲、Anja Geitmann、栗原大輔、東山哲也

タイトル(英)
Live imaging of calcium spikes during double fertilization in Arabidopsis
タイトル(日)
シロイヌナズナの重複受精におけるカルシウムスパイクのライブイメージング
発表された専門誌
Nature Communications, 5, 4722, 2014

カルシウムは細胞内の情報伝達の役割を担うことが知られています。動物では精細胞が融合するとき、つまり受精時の卵細胞でのカルシウム濃度の上昇や受精卵でのカルシウム振動(カルシウム濃度の変化)などが詳しく解析されてきました。これによって、カルシウム濃度変化から受精の進行を知ることができます。しかし植物では、受精に伴ってどのようなカルシウム濃度変化があるか解明されていませんでした。
 本論文では、胚珠(受精前の種子組織)を用いた高効率な体外受精と、高感度な顕微鏡を用いたカルシウム濃度観察法により、受精に伴うカルシウム濃度変化を観察することに成功しました。卵細胞のとなりに2つある「助細胞」に花粉管が誘引されて到達すると、2つの助細胞でカルシウム振動がはじまりました。一方の助細胞で濃度が高まると花粉管から精細胞の放出が起こりました。この瞬間、卵細胞、中央細胞、2つの助細胞の全ての細胞でカルシウム濃度が最大値を示し、カルシウム濃度が高まっていた助細胞は崩壊しました。続いて卵細胞では、受精に伴い一度だけカルシウム上昇が観察されました。受精によってカルシウム振動が始まる動物とは異なり、植物では一度だけのカルシウム濃度上昇により、2つ目の精細胞との受精を防ぎ、胚発生開始のタイミングが制御されている可能性が考えられます。これらの知見は、組織深部で進行する植物の重複受精機構の解明につながるものと期待されます。

図1:受精時のカルシウム上昇(卵細胞)

2つの精細胞のうち1つが卵細胞と受精した瞬間(矢じり)、卵細胞のカルシウム濃度が15秒以内で素早く上昇する。2つの精細胞核(白色)の間隔が約5マイクロメートル。

図2:重複受精におけるカルシウム濃度の変化

受精に深く関わる卵細胞、2つの助細胞、中央細胞におけるカルシウム濃度の変化を模式的に示す。助細胞は花粉管の誘引と受容に関わる。卵細胞と中央細胞は、それぞれ精細胞と受精し、胚と胚乳をつくる(重複受精)。

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