第31回論文紹介(2018.6更新)
- グループ名
- 発生成長制御学グループ
- 著者
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髙橋 めぐみ、髙木 新
- タイトル(英)
- Optical silencing of body wall muscles induces pumping inhibition in Caenorhabditis elegans
- タイトル(日)
- Caenorhabditis elegansにおける体壁筋の光遺伝学的鎮静化はポンピングを抑制する
- 発表された専門誌
- PLoS Genet.;13(12):e1007134. 2017 Dec 27
摂食行動は動物の生存・成長・繁殖に必須であり、体の生理的な状態と外部環境の両者に応じて適切に調節されている。摂食行動の調節機構解明は、生理学の重要課題であり、また、人の肥満・摂食障害治療など社会的にも意義があるが、高等動物の摂食行動は複雑であり、その調節機構解明は容易ではない。
本研究では効率の良い実験が可能なモデル動物である線虫 C. elegansを実験材料に用い、光作動性プロトンポンプArch、あるいは光作動性陰イオンチャネル ACR2を用いて線虫の移動運動を司る体壁筋とよばれる筋肉の活動を光によって操作した。その結果、体壁筋の活動を抑えると移動運動が停止するだけでなく、やや遅れて線虫の摂食器官である咽頭注の運動も停止することを発見した。さらに、様々な神経系因子の突然変異体を利用することで、体壁筋が鎮静化状態にあるという情報が、UNC-7/イネキシン分子依存的な神経系とUNC-31/CADPS/CAPS分子が関わる内分泌系の2つの経路を介して咽頭に伝えられ、その結果、摂食運動が抑えられることが明らかになった。
本研究により、線虫の体壁筋の状態と摂食運動の間に関係があることがはじめて明らかにされた。線虫の摂食運動を抑制する機構は促進機構に比較すると研究が遅れており、今後、解明が進むことが期待される。

今後の予定