論文紹介

第31回論文紹介(2018.6更新)

グループ名
脳回路構造学グループ
著者

Daichi Yamada, Hiroshi Ishimoto, Xiaodong Li, Tsunehiko Kohashi, Yuki Ishikawa, Azusa Kamikouchi

タイトル(英)
GABAergic local interneurons shape female fruit fly response to mating songs
タイトル(日)
メスのショウジョウバエが示す求愛歌への応答性はGABA作動性の局所介在神経細胞群によって調節される
発表された専門誌
The Journal of Neuroscience, in press (doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3644-17.2018)、2018年


私たちの言語や、鳥や虫が奏でる求愛歌など、多くの動物は、それぞれの動物種に固有な音を使ってコミュニケーションを取っています。中でも音のリズムは、同種と異種の求愛歌を聞き分けるための特徴として、様々な動物種で利用されています。では、私たちはどのように音のリズムを聞き分けているのでしょうか?私たちは、ショウジョウバエという小さな昆虫を利用して、この謎に挑みました。ショウジョウバエは、見た目こそ人間とは全く異なりますが、人間と同様に音のリズムのわずかな違いを聞き分けることができます。今回の研究で私たちは、メスのショウジョウバエの脳内の特定の神経細胞が、音のリズム検出細胞にリズムの速さに応じた「ブレーキ」をかけることで、特定のリズムの情報を効率的に抽出するシステムを構成することを発見しました。このブレーキは、求愛歌情報を伝える神経経路に対して「フィードフォワードループ」と呼ばれる様式の神経回路を形成することで、求愛を受け入れるかどうかを、適切に判断する、という重要な機能を担っているのです。
ショウジョウバエは、動物一般に共通する神経メカニズムを多く備えているため、豊富な遺伝子操作技術により、研究を速く進めることが可能です。今回発見された脳内メカニズムは、今後、私たちの会話や音声認識にも共通する「音のリズムを分析する脳内メカニズム」の解明に大きく貢献することが期待されます。

図1:

ショウジョウバエのメスが、求愛歌を奏でるオスを受け入れるかどうかを決定するために重要な脳内経路。今回の論文より改変のうえ転載

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