第31回論文紹介(2018.6更新)
- グループ名
- 動物器官機能学グループ
- 著者
-
長尾 勇佑、髙田 広之、宮台 元裕、足立 朋子、関 良子、亀井 保博、原 郁代、谷口 善仁、成瀬 清、日比 正彦、ロバート・ケルシュ、橋本 寿史
- タイトル(英)
- Distinct interactions of Sox5 and Sox10 in fate specification of pigment cells in medaka and zebrafish
- タイトル(日)
- Sox5とSox10はメダカとゼブラフィッシュの色素細胞の運命決定において異なる相互作用を示す
- 発表された専門誌
- PLoS Genetics, 14(4), e1007260, 2018
私たちは、メダカの色素細胞発生をモデルとして、SOXをはじめ種々の転写因子が多様な細胞種を作るメカニズムを研究してきた。これまで、メダカの黄色素細胞と白色素細胞の系譜分岐においてSox5が運命選択を担う分子スイッチとして機能することを報告してきた。本論文では、色素細胞発生への関与が示されていたSox10とSox5が相互作用する可能性を、メダカとゼブラフィッシュを材料として検証した。
メダカは黒、虹、黄、白色の4種の色素細胞を持ち、ゼブラフィッシュは白以外の3種類を持つ。Sox10は両魚種が共通に持つ3種類の色素細胞の発生に必須であり、Sox5はゼブラフィッシュではSox10の作用をわずかに阻害することが分かった。一方、メダカでSox5は黒色と虹色の発生においてSox10に阻害的であったが、黄色と白色ではSox5とSox10の作用は協調的で、黄色の形成を促進し白色の形成を抑制した。
メダカにおいてSox5とSox10は系譜によって異なる作用を示すことが明らかになった。メダカの黄・白色素胞系譜に特有のSoxの機能は、ゼブラフィッシュと異なりメダカでは黄色の前駆細胞からさらに系譜を分岐させて白色を作ることと深く関係していると想像される。色素細胞発生に中心的な役割を果たすSox5とSox10の作用を少し変更することで、メダカは新奇な細胞種(白色)を進化的に獲得するに至ったのではないだろうか。

今後の予定