論文紹介

第31回論文紹介(2018.6更新)

グループ名
動物器官機能学グループ
著者

日野 太夢、中西 晶子、関 良子、青木 翼、山羽 悦郎、川原 敦雄、清水 貴史、日比 正彦

タイトル(英)
Roles of maternal wnt8a transcripts in axis formation in zebrafish
タイトル(日)
母性wnt8a転写産物のゼブラフィッシュ体軸形成における役割
発表された専門誌
Developmental Biology 434(1): 96-107, 2018

ゼブラフィッシュの初期発生において、背腹軸の形成機構は受精直後から開始する。卵黄植物極に存在する背側決定因子が、微小管依存性に将来背側へと輸送され、Wntカノニカル経路を介して背側特異的遺伝子の発現を誘導することで背側軸を決定すると考えられてきた。wnt遺伝子の内、唯一wnt8aのmRNAだけが卵母細胞の植物極に局在し背側誘導能を持つことから、Wnt8aが背側決定因子の有力候補とされてきた。本論文では、TALEN法によりwnt8a遺伝子変異体を作製した。ゼブラフィッシュwnt8a遺伝子は、染色体上並列にならぶ二つのORF(1/2)を有している。ORF1またはORF2単独の接合体変異体では、体軸形成異常を示さないが、ORF1/2両方を欠損したwnt8a接合体変異体は強い前方背側化表現型を示すことから、ORF1とORF2が腹側、側方及び後側の組織形成に冗長的に機能することが示された。従来の予想とは異なり、wnt8a母性変異体は体軸形成に異常を示さなかった。一方、母性接合体複合変異体では、接合体変異体に比べてより重篤な前方背側化表現型を示した。これらは、母性wnt8aが初期背側決定には必須ではないが、接合体wnt8aと協調し腹側、側方及び後部の組織形成に関与することを示している。本論文ではさらに、Wnt6aを新たな背側決定因子の候補として見出した。

図1:wnt8a欠損の表現型と新たな背側決定因子候補の探索

(A)野生型(WT)およびwnt8a接合体(Z)、母性(M)変異体。1日胚。
(B)野生型(WT)およびwnt8a母性遺伝子欠損卵母細胞におけるwntファミリー遺伝子の発現(RT-PCR)。1日胚はコントロール。新たにwnt6aが母性に強く発現していることが示された。
(C)wnt6aの発現および機能解析。wnt6aは卵黄植物極で発現しており、wnt8aと同様、背側特異的遺伝子dharmaの発現を誘導することが示された。

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