第31回論文紹介(2018.6更新)
- グループ名
- 植物生理学グループ
- 著者
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Shigeo Toh, Shinpei Inoue, Yosuke Toda, Takahiro Yuki, Kyota Suzuki, Shin Hamamoto, Kohei Fukatsu, Saya Aoki, Mami Uchida, Eri Asai, Nobuyuki Uozumi, Ayato Sato, Toshinori Kinoshita
- タイトル(英)
- Identification and Characterization of Compounds that Affect Stomatal Movements
- タイトル(日)
- 気孔開閉を制御する化合物の同定とその作用機作の解析
- 発表された専門誌
- Plant & Cell Physiology 2018年 in press.
植物の表皮には気孔が数多く存在し、植物はこの孔を通して光合成に必要な二酸化炭素を取り込みなど、大気とのガス交換を行っています。気孔は太陽光に含まれる青色光に応答して開口し、植物ホルモン・アブシジン酸(ABA)により閉鎖します(図1)。孔辺細胞に青色光が当たると、細胞膜プロトンポンプが活性化され、気孔開口の駆動力が形成されますが、青色光がどのようにプロトンポンプを活性化するのか、シグナル伝達の詳細は完全には明らかになっていません。
本研究では、化合物ライブラリー(約25,000化合物)を用いて、気孔開度に影響の与える化合物の探索を行い、光による気孔開口を 抑制する新規化合物9個を選抜しました。さらに、これら化合物は、ABAとは異なる様式で細胞膜プロトンポンプの活性化を阻害し、気孔開口を抑制することが明らかとなりました。また、化合物の一つであるSCL1をバラ等の葉に散布したところ、切り取った葉の萎れが顕著に抑制されることがわかりました(図2)。植物の乾燥耐性付与効果のある薬剤として、ABAの類似化合物の開発が進められていますが、ABAは種子の休眠や成長阻害など多面的な生理作用を持つため、その副作用が問題となっています。しかし、今回発見した化合物は、気孔のみに作用して植物に乾燥耐性を付与することから、副作用のない乾燥耐性付与剤の開発につながることが期待されます。

今後の予定