論文紹介

第31回論文紹介(2018.6更新)

グループ名
発生・メカノ・セルバイオロジーグループ
著者

Simon Vial-Pradel, Sumie Keta, Mika Nomoto, Hiro Takahashi, Masataka Suzuki, Yuri Yokoyama, Michiko Sasabe, Shoko Kojima, Yasuomi Tada, Yasunori Machida* and Chiyoko Machida* (*Corresponding authors)

タイトル(英)
Arabidopsis zinc-finger-like protein ASYMMETRIC LEAVES2 (AS2) and two nucleolar proteins maintain gene body DNA methylation in the leaf polarity gene ETTIN (ARF3)
タイトル(日)
シロイヌナズナのジンクフィンガー様モチーフを保持する AS2 タンパク質と二つの核小体タンパク質は葉の表・裏の極性を決定する ETTIN (ARF3) 遺伝子のコード領域(ジーンボディ)におけるDNAメチル化の維持に関与する
発表された専門誌
Plant Cell Physiol. doi:10.1093/pcp/pcy031, available online at www.pcp.oxfordjournals.org, 2018

我々は、シロイヌナズナの葉の表—裏(向軸面ー背軸面)の極性分化の分子機構を研究している(図1)。葉原基ではまずETT/ARF3などの裏側化遺伝子が発現し、その後表側化遺伝子が発現し表—裏極性が確立される。その際、ASYMMETRIC LEAVES2 [AS2:ジンクフィンガー(ZF)様モチーフを持つ植物固有のタンパク質]とAS1 (MYBタンパク質) が複合体を形成し、ETTなどの裏側化遺伝子の発現を抑制することが重要である(図1)。これまでに、我々はAS2-AS1複合体が裏側化遺伝子である ETTのコード領域 (exon 6) にある6カ所のCpG部位のメチル化維持に関わること、このメチル化は METHYLTRANSFERASE 1 (MET1: 脊椎動物の DNMT1ホモログ) により誘導されること、met1変異体の茎頂では ETT mRNA のレベルが増加することから、AS2-AS1はエピジェネティックなETT抑制に関わることを報告した (Iwasaki et al., Development 2013, 140: 1958–1969)。動植物全体を見ても、コード領域のDNAメチル化維持の意義と仕組みについては、まだほとんどわかっていない。今回は、AS2とともに二つの核小体タンパク質(RH10 RNAヘリカーゼと NUC1ヌクレオリン)が、ETTのexon 6内の別なCpG部位のメチル化維持に関わっていることを報告した(図2)。AS2とAS1も核小体近傍に局在することから、このようなCpGのメチル化維持は核小体の近傍で起こっている可能性があり、今回の知見はCpGメチル化の維持に関する新奇な仕組みの存在を示唆している(図3)。興味深いことに、シロイヌナズナのMET1は脊椎動物のDNMT1のホモログであるが、構造的に異なる点が一つある。それは、DNMT1にはCpG結合に関与しているCxxC-ZFドメインが存在するが、MET1には無いことである。本論文では、AS2がETT遺伝子のexon 1のCpGを含む配列に結合し、その結合にはZF様モチーフが必須であることを明らかにした(図3)。AS2のexon1への結合とexon6におけるメチル化の維持との連関を解明することが今後の課題である。

図1:

図2:

図3:

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