論文紹介

第37回論文紹介(2021.6更新)

グループ名
器官機能学グループ
著者

伊藤 翼、井上 慎介、孫 筱丁、楠田 遼、日比 正彦、清水 貴史

タイトル(英)
Cfdp1 controls the cell cycle and neural differentiation in the zebrafish cerebellum and retina
タイトル(日)
Cfdp1はゼブラフィッシュの小脳や網膜において細胞周期や神経分化の制御に関与する。
発表された専門誌
Developmental Dynamics(2021), DOI:10.1002/dvdy.371

脳において、様々なニューロンが正しく形成されるには、細胞周期と細胞の分化が協調的に行われる必要がある。しかしながら、このような細胞周期と細胞分化の制御に関わる分子に関してはよく分かっていない。本研究では神経形成において、クロマチンリモデリングに関与すると考えられている、核タンパク質のCfdp1に着目した。このCfdp1の役割の解明のために、ゼブラフィッシュのcfdp1変異体を用いて、詳細な解析を行った。

cfdp1変異体では小脳顆粒細胞の前駆細胞は維持されていたが、分化途中の未成熟な顆粒細胞は著しく減少していた(図1)。また、細胞死や細胞周期G2/M期のマーカーを用いた解析から、cfdp1変異体では細胞死の上昇やG2/M期の細胞の増加が見られた(図1)。さらに、BrdUパルス標識による細胞周期の解析から、cfdp1変異体ではG2期からM期への移行が遅延していることが分かった。また、cfdp1変異体で細胞死を抑制しても、未熟な顆粒細胞数は回復せず、G2/M期の細胞はさらに増加していた。このことからCfdp1はG2/M期の制御に関与し、cfdp1変異体ではM期で停止した細胞が最終的に細胞死を引き起こすことが示唆された。網膜においても同様に、cfdp1変異体では、細胞死の上昇やG2/M期の細胞の増加が見られ、網膜を構成するニューロンの著しい減少が見られた(図1)。

一連の結果からCfdp1は神経前駆細胞の細胞周期のG2/ M期の制御を行うことで、小脳顆粒細胞や網膜のニューロンの分化に関与することが明らかとなった(図2)。

図1:小脳や網膜における細胞死、細胞周期のマーカーを用いた解析結果

上図:小脳領域において、未成熟な顆粒細胞のマーカーの抗Neurod1抗体とG2/M期のマーカーである抗phospho histone 3(pH3)抗体、細胞死マーカーの抗cleaved caspase3抗体で免疫染色した結果。矢印はcleaved caspase陽性の細胞を示す。cfdp1変異体ではNeurod1陽性細胞の著しい減少が見られ、pH3陽性やcleaved caspase3陽性細胞の増加が見られる。

下図:網膜において、網膜を構成するニューロンのマーカーであるatoh7(神経節細胞)、vsx1(双極細胞やアマクリン細胞)、vsx2(双極細胞やミュラー細胞)、crx(錐体細胞や桿体細胞)の発現をin situ hybridizationにより解析した結果、及びG2/M期のマーカーである抗phospho histone 3(pH3)抗体で免疫染色した結果。cfdp1変異体では網膜のニューロンのマーカーの発現が減少し、pH3陽性の細胞の増加が見られる。

図2:小脳顆粒細胞や網膜のニューロン形成におけるCfdp1の役割

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