第40回論文紹介(2022.10更新)
- グループ名
- 細胞生物学/超分子構造学グループ
- 著者
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Tatsuyuki Waizumi, Hiroki Sakuta, Masahito Hayashi, Kanta Tsumoto, Kingo Takiguchi, Kenichi Yoshikawa
- タイトル(英)
- Polymerization/depolymerization of actin cooperates with the morphology and stability of cell-sized droplets generated in a polymer solution under a depletion effect
- タイトル(日)
- 枯渇効果の下での高分子溶液中に生成された細胞サイズの液滴の形態及び安定性とアクチンの重合/脱重合反応との協調
- 発表された専門誌
- Journal of Chemical Physics・155(7)・075101・2021 DOI: 10.1063/5.0055460
細胞には、様々な高分子が高濃度または混雑環境下で存在し、不均一な空間分布を生み出す物理現象である相分離、特に、液体と液体による液液相分離(Liquid-Liquid Phase Separation, LLPS)が引き起こされる。このLLPSの再構成実験系として、polyethylene glycol(PEG)とdextran(DEX)の混合溶液([PEG/DEX]二成分高分子溶液)がよく用いられる。
私達の先行研究により、[PEG/DEX]二成分高分子溶液中で、単量体のアクチンは均一分布するのに対し、アクチン線維はDEXの豊富な液滴内に局在することが明らかにされていた。
今回、[PEG/DEX]二成分高分子溶液中では、切断脱重合因子であるfragminを加えても、アクチン線維が長時間脱重合されずに液滴内に留まること(図、上段)、事前にfragminの添加によって脱重合させておいたアクチンでも、重合促進効果によって線維を形成して液滴内に濃縮すること(図、下段)、が示された。ところで通常、液滴は球形になるが、アクチン線維が内部に濃縮している場合、歪な形状をしたものが多くなる。そこにfragminを加えても、アクチン線維が脱重合されずにいる為に、形状が球形には戻らないことも明らかになった。
これらは、アクチンの動態が、生体高分子が混雑している環境ではバルクの系とは異なることを示唆している。

今後の予定