第40回論文紹介(2022.10更新)
- グループ名
- 細胞生物学/超分子構造学グループ
- 著者
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Toshinori Motegi, Kingo Takiguchi, Yohko Tanaka-Takiguchi, Toshiki Itoh, Ryugo Tero
- タイトル(英)
- Physical properties and reactivity of microdomains in phosphatidylinositol-containing supported lipid bilayer
- タイトル(日)
- ホスファチジルイノシトールを含有する基板支持脂質二重膜におけるマイクロドメインの物理的性質及び反応性
- 発表された専門誌
- Membranes・11・339・2021 DOI: 10.3390/membranes11050339
雲母基板上でのホスファチジルイノシトール (PI)とホスファチジルコリン (PC) から成る基板支持脂質二重膜 (SLB) の形態を原子間力顕微鏡 (AFM) で観察することによって、PIを含む脂質二重膜に形成されるマイクロドメインの大きさ、分布、および流動性の特徴を解析し、膜変形蛋白質FBP17の脂質膜表面上での集積に対するその役割を明らかにした。なおFBP17は、エンドサイトーシスに関与するF-BARファミリー蛋白質の一つであり、in vitroで脂質二重膜の突起形成を誘導する活性を持つ。
AFMトポグラフィーから、PIが自己集合して脂質膜中にサブミクロンサイズのドメインを形成することが示された。また、単一粒子追跡によって得られた脂質の側方拡散の時空間依存性から、マイクロドメインが周囲の領域よりも流動性が低く、脂質拡散の障害として機能することが示された。更に、FBP17 の集積過程の初期段階では、PI によるマイクロドメインが蛋白質集積の中心として機能すること、ドメインを囲む流動性の高い領域が新たな蛋白質を供給しドメインの成長を促すこと、が分かった(図)。
これらから、膜内に形成されたドメインが、脂質二重膜表面における蛋白質の動態に対してどの様に関与するのか、その過程が明らかになった。
図:
PIを含むSLBのAFMトポグラフィー(1.0×1.0 μm2)の連続写真。FBP-17 の添加から(a)203秒、(b)376秒、(c)897秒、(d)1418秒、(e)1962秒、 (f) 2679 秒、(g) 3753 秒、(h) 6260 秒後の画像。 (a、b) の破線は、視野中に生じた窪み、即ちドメインの範囲を示す。(b-d) では、白線で示した位置における膜の断面の厚みのプロファイルも併せて示す。なお、プロファイル中の赤三角を付した黒線は、ドメイン周辺の領域の高さレベルを表す。更に、ドメインの高さ(青三角を付す)については、その周辺の領域よりも低く窪んでいる場合は青線によって、高く突出している場合には赤線で表してある。また、ドメイン及びその周辺の領域中で生じた膜突起の代表的なものを、各々画像中に白と青の矢印で示してある。

今後の予定