論文紹介

第40回論文紹介(2022.10更新)

グループ名
微生物運動グループ
著者

本間 道夫、水野 彬、郝 雨希、小嶋 誠司

タイトル(英)
Functional analysis of the N-terminal region of Vibrio FlhG, a MinD-type ATPase in flagellar number control.
タイトル(日)
海洋性ビブリオ菌のべん毛本数を制御するMinD型ATPase、FlhGのN末端領域の機能解析
発表された専門誌
J. Biochem. 172(2):99-107 (2022)

GTPaseのFlhFとATPaseのFlhGは、海洋性ビブリオ菌のべん毛本数を制御する重要な因子である。FlhGは、大腸菌の細胞分裂制御因子MinDのパラログであるが、そのN末端領域はMinDよりも長く、また保存されたDQAxxLRモチーフが存在する。今回、N末端領域を欠失させるか、またはDQAxxLRモチーフにQ9A変異を導入すると、FlhGはFlhFのGTPase活性を刺激することができず、また菌は多べん毛の形質を示すことがわかった。これらFlhG N末端変異体の細胞内量を調べると、特に欠失させた場合に野生型と比較して著しく減少していた。変異体を野生型と同レベルで発現させると、べん毛の数は野生型レベルまで回復した。一度発現させたN末端変異体は、細胞内において安定で分解は見られず、変異はタンパク質の安定性に影響しないと考えられた。我々はN末端領域の変異により、FlhGの翻訳効率が低下した可能性を考えている。本研究により、FlhGのN末端領域はFlhFの活性と細胞内FlhG量を調節することによってべん毛の本数を制御していることが示唆された。FlhGはマスターレギュレーターであるFlaKに作用するため、FlhGはべん毛遺伝子群の転写に影響し、その結果FlhFによるべん毛形成を負に制御していると考えられる。

図:

(A) 様々な菌種のFlhG N末端領域のアライメント。FlhGはMinDに比べて長いN末端領域(FlhG specific region)をもち、その中に赤で示したDQAxxLRモチーフが存在する。ATP加水分解に関与するdeviant Walker Aモチーフを青でハイライトした。大腸菌MinD (EcMinD)の結晶構造は明らかになっており、アミノ酸配列の上にその2次構造を示した。Va, Vibrio alginolyticus; Cj, Campylobacter jejuni; Hp, Helicobacter pylori; Pa,

Pseudomonas aeruginosa

; Sp, Shewanella putrefaciens; Bs, Bacillus subtilis; Gt, Geobacillus thermodenitrificans.

(B) N末端欠失変異体ΔN20-FlhGの過剰発現によるべん毛本数への影響。ΔN20-FlhGを過剰発現させると、宿主NMB363株(ΔflhG; 多べん毛形成株)のべん毛形成を強く阻害した。このことから、N末端欠失FlhGはべん毛本数を負に制御する能力を保持していることがわかる。

カレンダー

今後の予定


pagetop