第40回論文紹介(2022.10更新)
- グループ名
- 植物生理学グループ
- 著者
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Friml J, Gallei M, Gelová Z, Johnson A, Mazur E, Monzer A, Rodriguez L, Roosjen M, Verstraeten I, Živanović BD, Zou M, Fiedler L, Giannini C, Grones P, Hrtyan M, Kaufmann WA, Kuhn A, Narasimhan M, Randuch M, Rýdza N, Takahashi K, Tan S, Teplova A, Kinoshita T, Weijers D, Rakusová H
- タイトル(英)
- ABP1–TMK auxin perception for global phosphorylation and auxin canalization
- タイトル(日)
- グローバルなタンパク質リン酸化とオーキシンのカナリゼーションにおけるABP1-TMKを介したオーキシン受容
- 発表された専門誌
- Nature 609, 575-581 (2022)
オーキシンは多彩な生理現象を制御する植物ホルモンであり、TIR1/AFB-AUX/IAA-ARFが核内のカノニカルなオーキシン感知機構として転写調節を制御することがよく知られている。しかしながら、オーキシンによって迅速に引き起こされる現象(イオンフラックス調節やタンパク質リン酸化など)やオーキシン輸送のフィードバック調節に関わる機構は、まだ解明されていない。また、50年前に発見されたABP1(Auxin-Binding Protein1)がオーキシン受容体なのかどうかも長らく議論の対象になってきた。本論文では、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のABP1の一部はアポプラストに分泌されること、また、アポプラストの典型的な酸性pH環境でオーキシンに特異的に結合することを明らかにした。さらに、細胞膜に局在するTMK1(transmembrane kinase 1)がABP1のパートナーとしてオーキシン誘導性の非常に素早いタンパク質リン酸化応答や細胞膜H+-ATPaseの活性化などに関与すること、abp1とtmkの変異体はオーキシン誘導性の維管束構造の形成と再生がうまく行えないことを示した。これらの結果は、ABP1がTMK1を介した細胞表面のシグナル伝達におけるオーキシン受容体であり、グローバルなリン酸化応答とオーキシン輸送の「運河化」を制御することを示している。

今後の予定