第40回論文紹介(2022.10更新)
- グループ名
- 脳回路構造学グループ
- 著者
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Riku Shirasaki*, Ryoya Tanaka*, Hiroki Takekata, Takashi Shimada, Yuki Ishikawa‡, Azusa Kamikouchi‡(*共同第一著者, ‡共同責任著者;下線:脳回路構造学グループの構成メンバー)
- タイトル(英)
- Distinct decision-making properties underlying the species specificity of group formation of flies
- タイトル(日)
- ショウジョウバエの群れ形成の種特性もたらす個体の意思決定特性
- 発表された専門誌
- Royal Society Open Science 号:9 ページ:220042 年:2022
群れの形成はさまざまな動物でみられる重要な生存戦略です。個体間密度や群れの安定性などの群れの性質は、生活史や生息環境に応じて種ごとに多様化していると考えられています。
群れは複数の個体が集合することで形成されます。そのため、個体の意思決定は群れの性質を決める重要な要素であると考えられます。例えば、「個体が群れに出会ったときにその群れに加わるか」や「群れに加わった後にどのくらいの時間群れに留まるか」の積み重ねによって、それぞれの種の群れの性質が決まることが予想されます。しかし、群れの性質の異なる種間で個体の意思決定がどのように異なるのかは詳しくわかっていませんでした。
神経行動学の実験動物として利用されるキイロショウジョウバエは比較的 “疎”な群れを形成することが知られています。一方、私たちは、南西諸島に生息するクワズイモショウジョウバエが安定した“密”な群れを形成することを見出しました(図1)。
そこで、群れを形成する過程の個体の動きを自動追跡するシステムを開発し、それぞれの種において個体が群れに出会ったときの意思決定を評価しました。その結果、クワズイモショウジョウバエはキイロショウジョウバエに比べて、好んで群れに加わり、また一度群れに加わると長時間群れに留まり続けることがわかりました(図2)。今後は、こうした意思決定の種間の違いを生み出す分子・神経回路に関する解析が待たれます。

今後の予定