<掲載誌> PLoS ONE (2012) 7: e29272 <メディアでの紹介> 47News [動画ニュース] 鱗食魚による捕食シーンを見られます MSN産経ニュース[リンク] 日刊工業新聞 [リンク] マイナビニュース
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様々な動物で、威嚇行動の起こりやすい方向(視野)があることが報告されている。それは、脳の機能分化との関係性が推察されている。闘魚を用いて、威嚇誇示行動の方向と形態的左右非対称性との関係を調べたところ、威嚇行動の偏りと頭骨の左右差は対応していた。これらは、脳の機能分化の個体差を調べる上で、形態分析が有効であること、魚類の様々な行動は形態的非対称性と対応していることを示唆している。
行動の左右非対称性は様々な動物で報告されているが、その意味づけは定まっていない。この論文では、タンガニイカ湖産エビ食魚Neolamprologus fasciatusの捕食行動について、行動の左右の偏りと形態の左右性との対応を報告する。この種はエビを狙っているときに、左右どちらかの体側を岩に沿わせるという、左右非対称な捕食行動を示す。
全観察個体の行動の偏りの比率は二山型の頻度分布を示し、約1/3個体には有意な左右の偏りがあった。また、この行動の偏りはその個体の顎形態の左右性と対応していた(左利きは右狙い捕食行動、右利きは左狙い捕食行動)。さらに、そのような各個体の左右性に対応した捕食行動をしたときは逆の時よりも、捕食成功率が高いことが示唆された。個体群中での左右2タイプの捕食行動は、頻度依存的に捕食効率に影響を及ぼしていると推察される。
脊椎動物の左右非対称性はよく調べられているが、それに対して無脊椎動物の報告は非常に少ない。この論文では、2種のヌマエビにおいて、形態の左右非対称性とその遺伝性、および逃避行動の左右差を調べた。
その結果、腹部のねじれの角度の頻度分布は二山型となり、交配実験で腹部のねじれの方向は遺伝形質と分かった。また、逃避方向もこのねじれ方向と対応した二山型を示した。ヌマエビは、逃避行動に関係する遺伝的な左右二型を持っていて、それは水生動物群集での捕食被食関係に影響を及ぼすことが考えられる。
<掲載誌> Zoological Science. (2008) 25: 355-363.